疾風ニ勁草ヲ知ル
「後漢書」王覇伝
王覇は、新末・後漢初の人
劉秀がいかなる苦境のときも、王覇は裏切ることが無かった
劉秀が更始帝・劉玄の大敵の難を避け、遠く移動したとき
王覇は、騎馬でその後を追った
その密偵は、実は王覇の知己であった
王覇が草原に出たときである
時ならず、疾風が辺りを覆った
密偵は身を隠そうとして腹這いとなったが、周りは丈の低い草である
草が疾風により薙ぎ倒されて、頸から上が露わになった
王覇と密偵とは互いを凝視した
「疾風によって勁草を知った」王覇は言った
この謂いは以下のとおりである
「其方は、私を追って慎重に行動したのであろうが
時ならず風があり、身を露わにしてしまった」
よって、
どんなに注意深く行動しても、時に利が無ければ
思いがけず不手際をするものだ
なお、本邦の戦国時代にあって
密偵なり間者なりを「草(くさ)」と呼んだのは
この故事によるのである